彷徨うキムンカムイ

家の鍵失くしちゃった

早くどこかに帰りたい

失踪企図を始めてからしれっと100日が経ち、やっと全部終わるかと思いきや、年末にタクシーで夜間救急にいくことになった。感染と炎症が見られるとのこと。産婦人科系の後遺症である。

 

手術は決まっていて、この頃は痛みや違和感のせいで不眠気味だ。眠れないと人は余計なことを考える。つきまとう過去、平然と目の前を闊歩する相手方。

私は生に呪われている。首吊り縄を編んでいるまさにその時、あの地震が来た。宮城から移住した人が興奮して「何かせなあかん」と言う。私は失踪前の居所から回収したスマートフォンを開く。石川から御母堂に連れられて大阪の学校に通っていた同級生で、筝曲の演奏が並外れて上手かったあの人の連絡先を辿る。無事であるならスタンプかリアクションで大丈夫、と送ったけど、まだ返事が来ない。基地局の電池が落ちているのか、それとも、昨日発表されたリストに名前があるのか。怖いから見ていない。Twitterのミュートワードも随分増えた。私だけが死に至れず、かといって生の世界にも留まれない。現地の人にとってはそれどころではなかろうが。

 

夜に決まってみる夢がある。自分から何かの汚染が広がって、見知った人を恐怖させる夢。夢から覚めた私は淡々と仕事する。電話をとり、Zoomミーティングに同席し、集めたデータをAIに流し込む。英単語を復誦し、Obsidianに基礎的なIT知識を書き込み、改正法案を読み、その他諸々の勉強する。悩んでいる友達数名に素早く返信する。星を眺める。悲しいほど心は元気だ。

報酬を支払っている有資格者が「けじめをつける案」を出してきた。私はこうしたいと述べると、それは極めて困難だと返ってくる。私の生存圏は失われたのだ。それでも元気だから生きるしかない。

 

だらだらと気持ちを書いてしまった。帰る場所も行く場所もない。早くどこかに帰りたい。ここは居るべき場所ではない。元気な不健康者は全員を汚染する、反対に、元気のない健康な人は汚染にすら気付かせず悠々とそこにいて、居場所の保証を得られる。

カウンセラーは「極めて危機的な」と言う。危機なんかどうでもいい。関東に引っ越す旨を話すと「会いたい」と言われる。それもどうでもいい。帰らせてくれ。どこか静かなところへ帰りたい。悲しい。